「ただいま…」

女の子が玄関のドアを開けると、お母さんがスーツを着て靴を履こうとしているところだった。

「あのね、今から出張でイタリアに行くことになったの。留守番お願いね」

仕事で忙しいお母さんは、春休みが終わってしばらくしてから日本に帰ってきた。

「寂しくはさせないよ!」

泣きじゃくる女の子を抱きしめ、お母さんは言った。一人ぼっちじゃない、そう思うと女の子は嬉しかった。

でも、家に帰って来てくれてからまだ一ヶ月しか経っていない。女の子はお母さんの肩を掴んだ。

「待って!!ねえ、今度はいつ帰って来てくれるの!?イタリアに行ったらすぐ日本に帰って来てくれるの!?」

お母さんは困り顔で女の子の手を包み、言った。

「いつ帰って来られるかはわからない。でもね、私はちゃんとあなたのことを考えてる。だから、いい子で待ってて。もう小さい子どもじゃないんだから……」

お母さんが出て行った後、女の子は泣いた。

そして、蓮に電話で言った。

「私、すごく寂しいの!!だから蓮は離れて行かないで!もう……失うのは嫌!!」

蓮は「うん……」と寂しそうに言った。