「蓮くんって優しい人だよね」

「美桜ちゃんが笑ってくれると、すごく嬉しくなるんだ!」

「蓮くんにはいつも助けられてるんだ〜」

「美桜ちゃんの力に少しでもなれたら、それだけで幸せなんだ」

自分の知らない二人の思い出が増えていき、それを二人が恥ずかしそうに話すたびに女の子は泣きたくなる。

校舎の裏で誰にも見つからないように泣いたこともあった。

愛されたい、必要とされたい、そんな思いは強くなっていった。蓮のことを私は好き。でも蓮は美桜が好き。嫌というほど見せつけられてきた。

体育祭の借り物競走で空が止めなければ、きっと蓮は美桜を選んでいた。あれは空の優しさ。

私は、どうしたらいいの?

自分に何度も問いかけても、答えが返ってくることは、永遠にない。そう考えると虚しくて女の子はため息をついた。