遼「俺は、犬好きじゃないよ。」

花恋「え?」

遼「むしろ、いい思い出がない。
昔、大きな犬に追いかけられた事が
あって、苦手ってほどではないけど
好きでもない。大型犬は嫌いだ。」

ああ、そっか。思い出した。

遼「花恋が見てるのは
俺じゃないよね?
花恋は今、誰を見てるの?」

犬が好きなのは春川だった。

いつか、迷い犬を拾ってきて
屋敷で世話してたっけ。
飼い主が見つかった時
瞳を潤ませてたっけ。

何で、間違えちゃうのかな。
こんなにも大切な事。

崎本さんに嫌な思いをさせないように
今まで頑張ってきたのに
何で、いなくならないのかな。
春川は。...離れているのに
ずっと私のそばにいるのかな。

遼「ごめん。俺は俺じゃない
誰かを見てる花恋の事を
愛せるほど大人じゃない。」

花恋「あなたが謝る事じゃないのよ。」

遼「楽しかった。花恋と過ごした
今日までの時間、全部幸せだった。
だから、もういいよ。
今まで、頑張ってくれてありがとう。
...下で待ってると思う。」

崎本さんは悪くない。
悪いのは...全部......