ACT2〜破滅〜


それから3年が経った日のこと。
タクミは夜更かしをし、書庫の本の中で眠ってしまっていた。


タクミ「寝落ちてた…」


「おい、あれ人が埋もれてるんじゃないか?」


「あぁ、あの問題児の相棒か。
ほっとけよ」


「重罪人の相棒なんて、つくづく可哀想だよな」


周りの神父達がヒソヒソとタクミの噂話をする。
行方を眩ませたリオは処分、その場に居合わせていたタクミはシスターにより無期限謹慎処分になってしまった。
そのせいで協会から出ることは許されず、やることと言えば子猫と戯れるか、光魔法の特訓しかなかったのだ。
自分を馬鹿にして裏切ったぶん仕返しをしてやる、そう思ってこの3年間勉強と魔法に勤しんできた。


タクミ「(俺に今出来ることは、アイツが誰かに殺される前に…)」


アイツを殺すこと。


そう誓うタクミの首元にはルビーのネックレスがかかっていた。





そして時は経ち昼下がり。
階段の隅で少女が一人泣いていた。
そこへ、見知らぬ青年が話しかけてきた。


リオ「どうしたんだい、お嬢さん?」


話しかけたのはリオだった。
なぜここへ帰ってきた理由は分からないが、きっと何かを企んでいるに違いない。


「転んじゃったの…」


少女が涙を拭きながら悲しそうに呟いた。


リオ「そうか、少し待っておくれ」


そう言うとリオは素早くガーゼとテープを取り出し、少女の膝に貼ってあげた。
そして、少女の手当した膝に手を置き、呟いた。


リオ「君にご加護があらんことを」


すると手を当てたところが微かに紫色に光出した。


リオ「ほら、もう痛くないだろう?」



リオが手を離すと、その光は消えた。
そして、その少女には笑顔が戻っていた。


「うん、ありがとうお兄ちゃんっ!」





その時、協会ではちょうどシスターが神への懺悔を終えたところだった。
シスターが自室へ戻ろうとすると、カツカツとこちらに向かって歩く音が聞こえてきた。


シスター「おや、どちら様ですか?
こんな朝早くか((ザシュッ…


リオ「失礼、あまり時間が無いんだ」


リオがシスターの腹部に剣を刺した。
シスターが力無く倒れ、最後に見たのは笑顔のリオ、そして笑顔で血を弄ぶ悪魔と死神の姿だった。





シスターの屍がほかの神父によって発見され、協会中は大騒ぎになっていた。
もちろんその頃にはリオはおらず、懺悔室はもぬけの殻だった。


「なぜ見つからない、これほど派手にアイツは動いているのに!!」


「し、しかしこのままでは攻撃をされる一方です。
そんなことになったらこの協会は…」


眉間にシワを寄せるのは、長年この協会で務めてきた法王だった。


「タクミを呼べ」


「っ、なぜですか?」


「…彼を使うんだ」





法王室に連れてこられたタクミは、法王の前にひざまづいた。


「お前は幾度に渡りリオの殺害を進言してきたが、勝算はあるのかね?」


「はい、必ず」


「ならば貴様に命じる、リオを速やかに処理せよ」


「仰せのままに」


こうしてタクミはリオに復讐するため、宛のない旅に出る事になる。