夢であって夢じゃない。そんなファンタジックな世界にどうやら投げ込まれたようだ。

なんて、そう簡単に飲み込めたら、噛み砕けたらどれだけ心が楽だったことだろうか。

今は、夢もドラマもないそんな現実だったあの頃を、懐かしみそして恨んだ。

到底追いつかない。頭の中。 気持ちの整理。

「諦めてよ」
嫌だ
「もう着いちゃったんだよ、君は」
嘘だ
「いい加減ー」
「やめろ」

やめてくれ。そんな心が声となり、姿を見せた。

「そう言われても、ねぇ?」
「なぁーん」

「なんで、こんなに夢にまで見た展開を、俺は怖がっているんだ。」

「知りたい?」

「...」

「そっか、知りたくないのね」

知りたいさ。でも怖い。

「怖い、か」

なんで分かる。

「君のことはずっと前から知ってるもん」

意味が、わからーー
「分からないだろうよ、だって君は今日知ったんだから」

「僕が、僕達が誰かって、君は今日知ったんだよ」

あれだけ煩かった蝉たちが、夏の日差しが、気付けば仄暗い闇の帳に飲み込まれていた