「ん~………、さ、つき…………ぃ」


え、日和起きたか?


だが、また寝息が聞こえ始めた。


なんだ、寝言か。


ずっと遠くから見ていただけの日和が、今は俺のものになるなんて、思いもしなかった。


入学式の日から少し気になっていた。


いわゆる一目惚れ、ってやつかな。


俺は日和から見て斜めの結構後ろ側の席。


だから授業中はよく日和を眺めてしまっていた。


眠たそうに頬杖をして、しばらくするとハッとして顔をあげる後ろ姿が愛おしくて仕方なかった。


遠足の日だって、本当に心配した。


日和が大怪我したんじゃないかって。


俺はスポーツ一家だから、怪我したあとの大変さくらいは分かる。


けど、心配した理由はそれだけじゃなかった。


純粋に好きな子が怪我したとなれば、落ち着かなくもなる。