今日はいつもより暑い。背中に汗が伝う感覚を感じながら、きっとこれは気候のせいではないんだろうな、と考えていた。

 終礼が終わり、黙々と帰宅する生徒、その場に泣き崩れる生徒、教室の空気はとても混沌としていた。私はその光景を横目に教科書を鞄に詰め込み始めた。

 その時、

「よぉ」

 突然声を掛けられ、驚いて顔をあげた。

「あ、加藤くん」

 加藤くんが私のクラスにやってくることなんて、今まで一度もなかった。

「どうしたの?」

 普段だったら私と加藤くんというおかしな組み合わせに、クラス中の視線を集めてしまうところだったけど、さすがに今日はそのような状況にはならなかった。

「……別に何も」

 そのまま彼は教室を出てしまった。私は慌てて後を追いかけた。

「清水くんのこと?」

 ぴたりと、彼は歩きを止めた。

「俺よりも気にしている奴らが、約3名いるな」

 そう言って再び歩きだした。私はこれからの質問攻め地獄を想像しながら、後に続いた。