「どうした?」

隣には睦月がいてあたしの顔を心配そうに見つめていた。

「ちょ…っと…怖い夢を見ただけ。大丈夫だよ」


あたしは少し笑って睦月を安心させようとした。


睦月は何も言わずあたしのほっぺたに触れる。

「泣いてるじゃん」


そう言いながら涙を拭いてくれた。


「あ、ほんとだ」


全然気づかなかった。まだドキドキしてる。
リアルで気持ち悪くて怖かった。

「苺香」


頼りない胸にあたしを抱き寄せた。


「お母さんは大丈夫だから…」


きっとおばちゃんのことだと思ったんだろう。
今の状況から考えると普通はそうなんだけど。

あたしを抱きしめてる腕の力がよりいっそう強くなる。


「…うん」




あたしは本当のことを言えなかった。
睦月が目の前からいなくなるのが怖かったんだ。



ゆっくり瞼を閉じて睦月のぬくもりを感じる。


そのぬくもりが消えないように


いなくならないように


強く抱きしめて…。