その後もいくつか質問をする。今は勉強をしているのか、現在の交友関係はどうかなど、とにかく当たり障りないものを選ぶ。
その度二階堂菫子は全てにすらすらと答え、花を食べ尽くしてからはちゃんとしたお見舞い品のクッキーを食べていた。

「ところで今貴方は病院にいますが、なぜだかわかりますか?」

「大丈夫、わかっています。検査入院だって言ってました。うん?健康診断だったかな?…ああちがう、お家です。わたしの新しいお家だ。ええ、住んでいます。外に出るのは禁止されてますけど大丈夫大丈夫大丈夫です、お花も食べられますし」

一息に言った彼女に少しの恐怖を覚えつつも内容をメモに書き込む。私が手帳にペンを走らせている間じゅう、彼女はずっと私の手元を見ていた。その瞳に感情は感じられない。ただ動いているから見ている、というようなものだった。
手帳を閉じ、クッキーを三枚いっぺんに口に入れている二階堂菫子に向き直る。

「……では、質問はこれでほぼ終わりです」

「ほぼ。ほぼですね、また来るのですね」

「迷惑でしょうか?」

聞くと、彼女は微笑んで首を大袈裟な程に横に振った。長い髪が宙を舞う。

「いいえ、人が来ることが少なくて少なくて少なくて寂しかったんです。うふふ、だから、ぜひまた来てください来てくれないと困ります。お待ちしております大丈夫です待つくらい何ともありません」

そう言う彼女はとても楽しそうだ。少なくとも私がここにいることで、彼女の気晴らしくらいにはなったらしい。

「それは光栄です。では次は…ええと、明後日の12時あたりに伺おうかと」

「わかりました、楽しみです。美味しいお花を持ってきていただけると更に有難いのですが…」

「了解しました、何か見繕ってきますね」

「ありがとうございます!」

お礼の言葉に微笑んで席を立つ。病室を後にし、病院から出るまで彼女は窓際から手を振り続けていた。