「何となく思ったんだけどさ。芽衣は…多分、俺に対して恨みを持ってるような気がするんだよな。」



これは、さっきの電話の時に感じたことだ。




「え?でも、芽衣ちゃんは琉偉のこと好きなんじゃ…」



「うーん。うまく言えないけど、芽衣は俺に対して恨みを持ってて、俺が大切にしてる柚をターゲットにしたのかなって。」




もちろん、恨まれることをした覚えはないんだけどさ。




そんなことを考えながら歩いていると、いよいよアパートが見えてきた。




「さ、柚。二人で芽衣んとこ、行こう。」



「うん。………その前に、琉偉。」




気合を入れた俺のスーツの裾を、柚が引っ張る。



そして、こう呟いた。




「私…琉偉とじゃなきゃ、幸せにはなれない。」



それって…さっき教えた安原さんが俺に言った言葉に対してか?




「他の誰とも、これ以上の幸せを感じることはできない。これから苦しいことも悲しいこともあると思うけど、それも琉偉とだから乗り越えられるの。琉偉と生きていくことが、私の幸せなの。だから…」



そこまで言いかけて、柚が俺の胸に飛び込んできた。





「……一緒に幸せになろうね。」




それは、柚からの最高の逆プロポーズの言葉で。



「俺も。柚とじゃなきゃ幸せになれない。だから結婚するんだ。ずっとずっと、一緒にいような。」




アパートの前で、愛しい柚を力いっぱい抱きしめた。