マーケティング課のオフィスを覗くと、琉偉の姿はなく。



メールをしておこうかなと、スマホを取り出した、その時。




「…柚?」




背後で缶コーヒーを片手に、琉偉が首を傾げながら立っていた。





「あ、琉偉。会いたかった。」




それは、ちょうど琉偉を探してたから“会えてよかった”という意味の“会いたかった”だったのだけれど。





「ど、どしたの…急に……」




そう呟くと、琉偉は口元を手で隠しながら、照れた表情で私から目をそらした。





「え…?………あっ!」




琉偉が“会いたかった”の意味を間違って受け取っていると気づいた途端、顔が噴火しそうなくらい熱くなった。





琉偉に会いたくて会いたくて、走ってきたように見えたんだろうな。




…実際、いつだって根底にはその想いがあるんだけどね。





「で、どうした?」



「あ、あのね。今日の帰り、一緒に帰りたいの。どうしても話したいことがあるから。」




「話したいこと?」




琉偉が再び首を傾げる。




「今話すと長くなるから、帰りに。ここで待ち合わせね。」



「うん、わかった。」




琉偉と一緒に帰る約束をとりつけ、私は自分のオフィスに戻った。




芽衣ちゃんのこと、すぐにでも話したかったけれど…




今はまだ琉偉に変な心配かけさせたくない。




帰り道にゆっくりと話そう。





そう思った。