目の前で、柚を呼び止めたのは…





知らない男だった。





どこのクラスのやつ?







多分、柚が知ってる男でもないはずだ。





ほら、柚だって首を傾げてる。





「俺のこと、覚えてない?」




気づけば、この空間には柚と俺と、この男の3人になっていた。





覚えてるも何も、お前のことなんて知らないっての。




そう言って、柚を呼ぼうとした時。





「ゆ…」




「あっ…あの時の……」




柚が何かに気づいたように、気まずそうに俯いた。




「思い出してくれた?嬉しいよ。あの日、君に告白したのを…」




そう言って、男は何故か俺を睨みつけ、続きを言った。




「この男に邪魔されたんだ。」





「はあ?俺、邪魔なんてしてな………あ。」





あの日、焼却炉の裏で柚に告白してた奴って、こいつ!?




こいつのおかげで、付き合えたわけだけど…




「何で今更そんなこと?」




つーか、こいつに柚の水着姿見せたくない!!




「柚っ、これ。」




首にかけていたタオルを、柚に渡す。




「あ、ありがと…」




そのタオルで柚は恥ずかしそうに体を隠した。





「…今さら?俺にとっては今さらでもなんでもない。もう一度告白しに来た、それまでだ。」




「えっ…」




真っ赤な顔して俯く柚。




てかそれ、ほとんど告白しちゃってるって。




だけど…




「させないよ?何度だって邪魔するよ。柚は俺の彼女だから。」




そう言って柚の前に立ちはだかった。




「お前はあの頃も今も、邪魔してくるんだな。全く、よく鼻の効く男だ。でも俺だって諦めないぞ。10年経っても、やっぱり倉科が好きなんだ。」




…おい。



言われちゃったよ。




「ご、ごめんなさい……」



すっかり小さくなってしまった柚。




「こら、言うなっつーの!お前……ってか、名前なんだよ。」



名前もわからないと、怒りようもないっての。




すると、そいつは言ったんだ。





「俺の名前?俺は、安原。安原崇。」