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豆電球が一つぶら下がる納屋の中は、それ一つだけで全て照らせるだけの広さしかない。

その中で、ジャガイモの入った見るからに重そうな段ボールを両手で抱え、私は「よっ。」っと掛け声を出して持ち上げた。




…やっぱり重い。


…………相当重いんだけどこれ。


腰にくるー




裏庭の納屋から運んでくると、丁度開けておいたドアを通った所で、麗香さんが廊下をホールの方からこちらに歩いてくるのが見えた。


手にはピンクのタバコの箱…


どうやら裏庭で休憩するらしい。


一瞬目が合い、一応「お疲れ様です。」と微笑んでこちらから声をかけるが、「フン。」と小さく鼻であしらわれた。


まあ、なんとなくそんな反応するだろうと思ってたけどね…


理由は分からないけど、会えばいつもこんな感じなのだ。


私は麗香さんが通り過ぎるのを待たずにそのまま歩いた。


廊下は2人並んで歩ける幅があり、先に通さなくても大丈夫だろうと思ったからだ。


だけど、それが良くなかった。


ピンヒールの床を打つ鋭いコッコッという音が徐々に近づき、ふわりと甘い香水の香りが鼻を掠め、すれ違う瞬間…


「邪魔よ。」


悪意が込められた言葉と共に左肩に衝撃が走った。