「やだ~久しぶりですね~」



手をひらひらさせ近づいてきた高橋さんは、相変わらず秘書に見えない。

見た目は、ジュリエットにいそうなタイプだ。

つまり、派手なのだ。

小夏のように顔が派手というわけではない。

作った見た目が派手なのだ。

長い髪にはゆるふわパーマを巻き、前髪は上げてポンパドールにしている。化粧は勿論濃い目だ。


「そうね、久しぶりね。」


今、自然に笑えているのかは定かではないが、何とか違和感のない声は出せた。


高橋さんがこの地味な格好で私だと分かったのは、部署異動後に一度、秘書課長に呼ばれて秘書課を訪れた際に会ったからだ。


それがなければ、私だと気付かなかっただろう。


あの日のことが悔やまれる。


「先輩~、この前会社の前で、男の人といるの見ましたよ~」



男の人…

秋庭さんといるところを見られたのだろうか?

他の人なら何とも思わなかっただろうけど、この子に見られと思うと、何か…嫌だな…



「ホストみたいなチャラい人。」



ホストみたいな?

最初に会った時、秋庭さんホストみたいな格好してたけど、あの時だけだし…

あっ…



記憶を手繰り寄せれば、一人思い当たる人がいた。