「ヒロもあの子の仕事しなさ加減知ってるでしょ？
流石の藤子先輩も匙投げたのよ…」


あの、藤子先輩が…


「もう頭きちゃってね。
私はね、どんな人にも、仕事出来ないなら覚えるまで教えるし、失敗したならフォローもする。ずっとそうしてきた。けど！
どんなに言っても仕事しない奴はいないものとして扱うと決め"た"わ。」


決め"た"と言うことは、最近なんかあっての決断ってことか…


しかも、藤子先輩のニコリと背筋の凍る微笑みから察するに、想像以上に相当ご苦労されてるようだ…


現在の社長第二秘書は、私がいた時からの問題児だ。
入社当時からやる気がなかった。
仕事も覚えようとしないし、全て適当。

だからと言って、他部署に異動させることも出来なかった。

なぜなら、秘書課以外の選択肢を持たない彼女は、取引先の社長令嬢で社長同士も仲が良い。つまり、無下に出来ない立場なのだ。

だから、秘書課内でどうにかするしかなかった訳で…

で、その結果、どうにもならなかったから、最後の手段として仕事の出来る藤子先輩の下に付かせたのだろう。


「いつになったら私の仕事、減るのかしら。」


「ならいっそ、上に進言して第二秘書を変えては？」と言おうとしたが、その言葉は直ぐに飲み込んだ。


飲み込んだ言葉を言ってたら、『なら後任はヒロにしてもらうわ。』と成りかねなかっただろう。