「勿論断る。」



断るに決まってるでしょ!

社長からのお願いだろうが、譲れないものがあるの!

そんな重要なパーティーなら、あの社長第二秘書も来るはず。

私が秘書課を去った事の顛末を知っておきながら、社長それ頼む!?



「そう言うと思った。」



同期入社で仲の良い小夏も、事情は全て知っている。

初めからダメもとで聞いたのだろう。


「社長、知ってるくせに。」


徐々に怒りさえ沸いてきた私に、「でもね…」と申し訳なさそうに小夏が口を開いた。


「事情を知っているあの社長が言うってことは、今回それほどの事があって…」


「それほどの、事?」


「うん…ちょっとあって…」



小夏の言葉は凄く歯切れが悪く、視線も泳いでいる。


何か裏がありそうだが、それでも、行きたくないものは行きたくないのだ。

それに、私がいなくてもあの人の良い宝田社長なら、円滑に進められないはずがない。



「でも、私今回は断るから。」



断固たる決意を表した時、私の背後でコツンとヒールが石床を打つ音がした。




「それ、断られると私の仕事が増えるのよね。」