「戻る気がなくても、上から辞令が出たらどうしようもないよね~
人事も社長に言われちゃったらさ~」


「えっ…出たの?…」



まさかね…今は辞令の時期じゃないし…
いや、でも特例で…


ないと思いながらも、完全にその疑念を振り払うことは出来ず、小夏の次の言葉を固唾を飲んで待つ。



「出てない。」


「もー!驚かせないでよー!」



はあーと地面に突き刺さりそうな溜め息を吐けば、少し気持ちが軽くなった。


「冗談が冗談に聞こえない。」


「そんなにビビんなくてもいいじゃん。
あの社長がヒロに恨まれるようなことするはずないんだからさ。」


まあ、それもそうですね…


「辞令は出てはないんだけど…」


「もう何よ?」


この話まだ続きあるの?


「再来週、重要なパーティーがあるんだけど、社長が秘書として同伴してほしいって。」


「………」



秘書としてって…

軽く目眩がしそうだ。

もう、これも冗談であってほしいよ…



「そのパーティーにヒロのこと気に入ってる宝田社長が来るから、少しでも円滑に進めたいみたいよ。
でも、これは正式なものじゃなくてお願いだから断ってもらってもいいって。どうする?」



どうするって…

社長から一社員へのお願いだよ?

そんなの勿論…