慎重で、頭の切れる冷静沈着な男。それが、早瀬を知る奴らが口を揃えて言うあいつの印象だ。

そんな早瀬が、俺に捕まりそうになった時、あんなに取り乱して、刃物で襲いかかってくるとは意外だった。

聞いていた印象とかけ離れていたからだ。

そりゃあ、警察には捕まりたくないだろうが…

どうも腑に落ちない。

そう言えば、拓海さんに引き渡した時、あいつ明らかにほっとした顔してたな。

警察に引き渡されて?

いや、引き渡される先が、警察だと分かったからか…

となると…

俺を誰かと勘違いしたってことか?



「何かあったら、連絡してくれ。」


拓海さんの声で、俺は思考の海から顔を上げた。


今、これについて考えても仕方ない。
だが、早瀬を捕まえる糸口が見つかるかもしれない。
少し調べてみるか。


「じゃあ、また来る。」


ソファーから腰を上げ、帰ろうとした拓海さんを俺は呼び止めた。

大事な話がまだ残っている。