柏木家の人間とはいえ、私にそんなに緊張しなくてもいいのに。


彼が少しでも緊張が和らぐようにと、

「こちらこそよろしくお願いしますね。」

と、私は出来る限りの笑顔で返した。

まあ、目はほぼほぼ前髪で隠れているから、口元でしか笑顔が読み取れないのだが。


残念ながら、それくらいでは彼の緊張は解せなかったようで、固い表情のまま彼は箱を置くと、仙崎さんの指示で直ぐに部屋から出て行ってしまった。


そんなに緊張しなくても良いのに…
いや、仙崎さんの目があるからかな?仙崎さん指導係っぽいし。


そんなことを思いながら置かれた箱を開ければ、中はぎっしり詰まった人参だった。


昨日の今日で…

仙崎さんが来た時点で、だろうとは思ったけどさ…

普通に郵送してくれれば良かったのに。

そんな私の表情(口元しか分からないが)を幼少より仕えてくれている仙崎さんは読み取ったのだろう。


「本日より、吉乃様がお仕事のご関係でロイヤルグローバルホテルにお泊まりになりますので、以前より私どもは先にこちらに参る予定だったのです。ですので、お気遣いはご無用にございます。」


「ああ…それで直接…」