白髪を後ろに撫で付け、丸眼鏡をかけた老人は、黒のスーツを着こなし背筋をピンと伸ばし立っていた。


もう軽く70は越えているはずなのだが、全くそれを感じさせない姿は、長年の仕事から培われたものだ。



「仙崎さん、どうしてこちらに…」


「朝早くに申し訳ございません。
吉乃様から、こちらをお届けするようにと言いつかって参りました。」


仙崎さんがそう言うと、扉の影から大きな荷物を両手に持った少年が現れ、綺麗なお辞儀をした。


「これは、新しく入った一原です。」

「一原です。どうぞよろしくお願い致します。」

仙崎さんに紹介された少年は緊張しているのか、表情は固くまだ幼さが残る顔に笑顔はない。