「はあああ、かっこいい一ノ瀬先輩っ!!」




昼休み。


穏やかな教室の窓から覗くのは、




一際輝くサッカーゴールの前。





毎日昼休みの私の日課。





一ノ瀬類―Icinose Rui―先輩。





いわゆる学校の王子様ってやつで、


完全に一目惚れだった。






「また一ノ瀬先輩眺めてんの?」


「結愛ちゃん!」


「好きだねえほんと」




遠山結愛ちゃん。



高校に入って2年、ずっと仲良しな親友。






「結愛ちゃん、かっこいいとか思わないの?」


「あーごめん、あたしは断然山田先生派なんで」


「あー。山田先生ね、」






結愛ちゃんの言う山田先生は、



たぶん一ノ瀬先輩に次いで人気のある人。





………噂をすれば人はやってくる。







「遠山〜、これ次の数検の案内。」


「ありがとうございます山田先生!」






数学が大の得意な結愛ちゃんと



数学教師の山田先生。




何かと関わることもあるんだろうけど、


世界で一番嫌いな教科が数学の私にとって





山田先生はただの数学バカな人。






ペコリと頭を下げると、


ニコッと微笑んで少し頭を下げられた。







────不覚にも、先輩以外の人にドキッとしてしまった瞬間だった。