‐1羽目・それを見て‐
地元の高校に通う吉原恵美はいつも通り学校で退屈な時間を過ごしていた。
お経のように流れていく教師の声は自然と眠気を誘う。
既に慣れた窓際の席も春の風を素直に受け入れ、頬をそっと撫でていく。
静かな教室、眠気の限界を迎えた恵美は教室を見渡した。
大半の生徒が寝ている。
恵美は諦めてスっと眠りについた。
どれくらいがたったのだろうか。
突然ガタガタッという音が教室中に響き渡った。
驚いた恵美はビクッと身体を震わせ眠い目を擦りながら音の正体へと目を向けた。
1人の女子生徒が椅子から落ちたらしい。
他の生徒たちもなんだなんだと顔を上げた。
そして腰を抜かした女子生徒の怯えた視線の先へ目をやった。

そこには鳩がいた。

生徒全員が目を疑った。
鳩だ。いや正確には鳩ではないのかもしれない。
教師の脳みそをつつく馬鹿でかい鳩のような者がいた。