出来損ないの黒宮さん

「…えー、黒宮信乃だ。3年間よろしく頼む。」

「こちらこそよろしく!なんだけど、好きなものとかない?あ、俺も信乃ちゃんって呼んでいい?」

「ああ、構わない。ぜひそう呼んでくれ。」

「やった!じゃあ、俺のことも日向って呼んでよ!」

「ああ、よろしく、日向。で、そうだ。好きなもの、だったな。……あまり思い付かないな。」

過去に、あまり自由だった思い出はない。

「え、そうなの?ケーキとか、クレープとか、そういう甘いものは好きじゃないの?」

「……くれえ…ぷ?」

何だそれ。

初めて聞いた。

いや、さすがにケーキは知っているが。

舞がすごい形相で私を見ている。

あまり変わらない源でさえ、目を丸くしている。

ということは、『くれえぷ』とやらは有名な物なのか。

「うそぉ!!じゃあ、明日4人で食べに行こうよ!美味しいお店知ってるから!」

「わ、分かった。」

舞の圧がすごい。



……そうか。

私にとってこれは友達との初めての寄り道になるわけだが。

明日の下校時刻まで約19時間もある。



それなのに、今から楽しみで仕方がない。