出来損ないの黒宮さん

舞は目を見開いて絶句している。

当たり前だ。

今日初めて会った人で、しかも大切な幼馴染みに名前で呼ばれるなんて、おこがましいにも程がある。

「…すまない。気にさわったのならもちろん黒宮でかまわな……」

「……信乃ちゃんマジ可愛いすぎか。」

ん?

今何て言ったんだ?

「信乃ちゃん!!」

「はっ、はい?!」

「名前、いっぱい呼ぶし、私のことも、気軽に呼んでね!!」


あ……。

心の奥が、じんわりと暖かくなる。

普通、これまで名前を呼ばれることは無かった、なんて言ったら変なやつ、とか友達のいない寂しいやつ、と思われるのが関の山だろう。

少し前の自分の発言がすごく恨めしい。

でも、彼女は今日初めて会ったばかりなのに、そうとは思えないくらい良くしてくれる。

きっと、すぐに気遣いの出来る、優しい人なのだ。

そんな素敵な人と3年間を過ごせる。

それはきっとすごく幸せなことだ。


「……ああ、嬉しい。いっぱい呼ぶし、いっぱい呼んでほしい。」

「うん!!」