当然のごとく、五時間目と六時間目の授業はまるで集中できなかった。

 常に先生の口もとを見ていないとすぐに何を話しているのかわからなくなってしまう詠斗にとって、授業中に他ごとを考えることは致命傷を負うのと同義だ。何度もうわの空になってしまうことに気付いた時点で、今日の授業は初めから受けなかったことにすると決めた。それが集中できない時のいつものやり方だった。

 授業内容は家に帰ってからゆっくり復習することにして、詠斗はぼんやりと美由紀の話を振り返り始めた。

 頭を殴られ、階段の上から放り投げられたという美由紀。警察の捜査でも、そこまで詳しくわかっているのだろうか。

 美由紀の友人が警察から疑われているというのだから、殺人事件として捜査しているのは間違いない。さすがはプロといったところか。事故に見せかけようとした犯人の意図は簡単に見破られてしまったわけだ。