「兄貴」

 もう十分だと目で訴えると、傑は一つ頷いて神宮寺と千佳の前に立った。

「僕の弟を愚弄したことは許しがたいが、君達が僕のもとへ自首してきたことにしよう。これもまた、弟の願いなのでな」

 ゆっくりと立ち上がった二人を連れ、詠斗達三人の前から離れていった。

 まだ涙を流している紗友の背をそっとさすってやると、紗友は詠斗の胸にしがみつき、肩を震わせて泣いた。

 詠斗は優しく紗友を抱き寄せ、黙ったまま髪をなでる。少しずつ、少しずつ、紗友は落ち着きを取り戻していった。

 こうしてやることが正解だったのか。

 今の紗友に、どんな言葉をかけてやればいいのか。

 詠斗にはわからなかった。