秀継は考えていた。



以前、政略結婚ではあったが、

祝言を上げたからには、心を通わせて、

添い遂げたいと思った女子おなごがいた。



しかし、元妻ゆうは秀継を油断させる為の、

道具だったのだ。

女子の姿形をしてはいたが、

内心は

櫻正宗を侵略しようと企み、

覚悟をして潜入していた。



秀継に心も体も許さず、

謀って実家と連絡を取り合い、

戦を仕掛けてきた。

たくさんの死者が出て、

叔母上光明院の婿殿も亡くなった。

己の甘さを責めたが、あとの祭りだった。

敗北した元妻ゆうの実家を取り潰さなかったのは、

せめてもの情けだ。



それからは、決して自分を見失うことはなく、

女子に心を許すことなく、

ただ時をやり過ごすことはあった。

うわべだけの空っぽな

刹那的な時間を過ごしてきた。



なのに、

突然現れた真由美がこれほどまでに、

心を波立たせ、

目が離せない存在になるとは、

思いもしなかった。



あまりにも役に立ちすぎて、

自分は利用しようとして、

卑怯な男になりそうで、

自制し慎重になっていた。

ただの女子なら、

何も考えず迷わずそばに置くものを。



本当は自分の国へ、

帰りたいと願っているのではないか？



いつか帰ってしまうのではと恐れ、

気持ちを確かめたいと焦り、

帰ると言われるのが嫌で、

何も聞けずにいる。



人を本当に好きになるとはこういうことか。

言葉や態度が気になって、

心を手に入れたいと願うほどに、狂おしい。



真由美が愛おしいと思う気持ちに、

失うかもしれない故、

閉じ込めておきたいと思う考えと、

激しい恋心に歯止めが効かなくなりそうで、

自分の気持ちを持て余している。



次の日

真由美は、朝早くからお舘さまが側近数名と、

須磨へ出かけたと知った。



私は港街ではすることもなく、

みんなの足でまといにならないようにしていた。

「自分の身は自分で守る」ため、

小刀くらいは使えるようになりたい。と考えていた。



有馬から荷物が届き、

村人に西宮さんの様子を聞く。



まだ、怪我の痛みと熱が続いて、

食事も思うようには取れず、

辛そうにしているらしい。



私の為に怪我をした西宮さん。

何か出来ないかな。

せめて、そばで看病したいと思う。

助けてくれた西宮さんに恩返ししたい。



村人たちと一緒に、有馬へ戻ることにした。