御影は

真由美の姿が見えなくなったのに気づいて、

あわてふためき捜していた。

また、真由美殿が連れ去られることがあってはならない。

どちらにいかれたのだろう?心配になる。



外に出て捜していると、

お舘さまの声が聞こえ、足を止めた。

真由美殿とご一緒か?と一瞬思う。



庭木の間から、

お舘さまが真由美殿を抱きしめておられるのがわかり、

まるで頭を殴られたような気分だった。



自分の気持ちに浮かれていて、

想像もしていなかった展開に。



さっきまでの高揚感は、

失望感にかわり、

全身が萎んでしまったようだ。



真由美殿はお舘様の想い人であったのか。

いつからだ?

全く気が付かなかった。

側近たるものなんとしたことだ。

確かに真由美殿は

敬愛するお舘さまにはふさわしいお方だ。

気づけなかった自分は側近失格だ…

悲しい気持ちと情けない気持ちとで

目も虚うつろに、よろよろと宴会場へ戻った。



ちょうど久保田と鍋島が帰るところに

鉢合わせした。



二人が冷やかしかけて、

さっきとは別人のように生気を失って、

オロオロやはり挙動不審な御影に、

「御影殿、どうされた?まるで失恋したみたいに」

久保田の軽口で、御影の涙腺が一気に崩壊した。

ハラハラと涙がこぼれる。



お舘さまとは、人間的にも、男としても、

器が違いすぎる。到底かなわない。

御影の心が、締め付けられるように泣いていた。



いつもと違う、ただならぬ御影の様子に、

二人から笑顔が消えた。

「御影殿!!どうされた?」



ポーカーフェイス御影の初めての恋は、

とても短かく、はかなく終わってしまった。



御影の想う相手が

誰かわからないまま、

聞かないままに、

御影、久保田、鍋島の3人は、夜通し飲み明かし、

男の友情を深めたのだった。