私のトップスとスカートを前に

変態たちが話し合ってるなんて露とも知らず、

のんきに異国の品を松姫と見ていた。



珍しいものが集められた部屋には、

地球儀が一つ置いてあった。



海がほとんどの地球儀は、

ずんぐりした日本が太平洋上にあるけど、

なんとなく大陸の数が足りないけど、

色も手触りも変だけど、

全体に形がひしゃげてるけど、

どこからみてもやっぱり地球儀だった。



「地球は丸い」

誰かさんの言葉を思い出しながら

自然と手が地球儀を回す。



「地球は青い」

映画のセリフをつぶやきながら、

ぼんやり眺めていた。



松姫が、侍女たちが息を呑んで、私を見ていた。



「真由美殿はこの地球儀なるものをご存じなのですか!?」

松姫が大きなデカい声で聞いてくる。



「知ってるというか、昔、実家にあったというか」

しどろもどろで答える。



この時代に地球儀を持つものは何人いたのか、

権力者でも滅多と目にすることはないという。

松姫や侍女たちが目を丸くしていた。



「一体何者?」

みんなの心の声が手に取るようにわかる…苦笑

でも誰一人、何も聞いてはこなかった。

松姫は、気まずくなるのを避けたのか、話題を変えた。



港町某所にて

「あの女は何者だ」

「明の使節団も尋ねていたが、

身に着けていた飾りは見たこともない代物だったぞ」

「宴では二つとない代物だと言ってた」

「聞いたことのない歌を歌って、皆に手拍子を打たせていた」

「この生地は絹なのか?」

「いや、穴があいておるわ」

「小さな布切れに字が書いてある」

「何か変な模様のような字や印が見える!」

「おい、漢字だ!」

「中国製、品質表示と書いてある!?」

「中国ってどこの国だ?」

「水に濡れても消えていないのか?」

「どうやって着るのだ??」

「ますます訳がわからん」

ひそひそ話していた声が、

どんどんパワーアップして大きくなる。



「静かにしろ!」

一人が声を押し殺して言うと、男たちは沈黙した。

しばらくして

「あの女、きっと使えるぞ」



男たちが声をひそめ、また話し出した。

「われらの国へ、連れて行こう」

「兵庫の戦利品として」

「櫻正宗を滅ぼす手始めじゃ」

「みなのもの急ぎ、手筈を整えようぞ!」