夜も更けて、宴はお開き。



今夜は御影さんから、たくさんのことを教わった。



お舘さまの名前は、

櫻正宗秀継様という。



櫻正宗家の長男は、生まれて直ぐ亡くなり、

次男は、数年前に流行り病で亡くなった。

小さい頃に人質として差し出されていた三男の

お舘さまが呼び戻され、家督を継いだこと。



有馬のお屋敷は別宅として造られ、

海の近くに大きなお屋敷があること。

 「兵庫津」と言う場所で、

明や琉球からの船もやってくるようだ。

「津」は港を意味する。

私の時代も「兵庫」は存在し、確かに昔は港だった。



「朝早くから夜遅くまで大変賑わい、

人や物が集まり、年々港は拡大しておりまする」と御影さん。



櫻正宗家は港湾整備で財力を蓄え、

領内の整備に力を注いでいる最中ということ。



屋敷にいる人たちの数名は、

先に使節団と一緒に山を下り

残りは後からの出発と聞く。

私は後からのグループに同行する予定らしい。



急に真顔になった御影さんが、

「あなた様には、まことに驚かされます。

突然われらの前に現れ、地図を読まれたかと思えば、

周辺諸国の様子を語り、童の命を吹き替えらせ、

火事の原因を言い当てられた。

そして先ほどは、

聞いたことのない調で海や山を歌われ、

皆を操るかの如、場を盛り上げ、

気が付くと皆が私も、

手拍子をしておりました。

あなた様の不思議なお力に、心底驚いております。

これからも、そのお力を貸してくだされ。

我々のために」と律儀にお辞儀をされた。



ここの人達は、私の話に耳を傾け、

理解しようとしてくれている。

食べ物や寝る場所の世話をし、

力を貸して欲しいと私に頭を下げる



いきなり現れた、

どこの誰だかわからない不思議な格好をした女を、

扱いに困ったとしても、どうにでもできたはずだ。

戦国時代ならばなおさら、殺されても、

売られても、誰にも文句は言えない。

それに私がいなくなっても、誰も気にさえ留めないだろう。



私からお返しできることがあるのか、

何ができるのかわからないけど、

学校で学んだ全科目を総動員して、

社会で身に着けた経験と知識を駆使して、

生きていくため足りない体力をカバーして、

少しでもみんなの役に立ちたいと思う。



自分で自分の居場所を少しづつ築いていこう。