晴空君はケーキ作りが大好きで、お部屋デートの時でも試作品の構造を考えている。


私は晴空君が紙に記す試作品の構造を隣で見ながら過ごすのは嫌いではないけれど、晴空君の頭の中は四六時中、ケーキの事で一杯なんだと思うと悔しい。


以前の外デートの時もスイーツが有名なカフェの視察に行き、三件ハシゴしたりして、一日が過ぎてしまった。


付き合い初めだったから一緒に入れるだけで楽しかったし、嬉しかったけれども、今ではスイーツから離れて遊園地に行ったり、フレンチとか食べに出かけたりしたいと思う様になってしまった。


欲を出したらキリがないけれど、もっと私を見てほしい。


───ランチブッフェの約束の日、ホテルでのランチと言う事もあって、綺麗めなワンピースにヒールのついたサンダルを履いた。


精一杯に着飾ってきた私を嘲笑うかの様に降り出した雨。


梅雨時だから仕方ないと言っても、今日は梅雨の中休みだとテレビの天気予報が伝えていたが外れてしまったようだ。


「穂奈美、タクシー拾うから乗ろう」


駅から歩いても行ける距離だったが、雨が強くなってしまい、タクシーを使う事にした。