スイーツよりも甘くとろけさせて

"東雲パティシエの息子"と伝えようとしたら、手のひらで口を塞がれて退場させられた。


「……余計な事は言わないでくれる?」


ボソリ、と呟いた晴空君はどこか怒っているかのようだった。


繋がれた手には晴空君の力が入っていて、ブッフェ会場までの道程を歩くのが痛かった。


御両親のパティスリーを有名にしたのは晴空君だけれど、取材に来るテレビや雑誌に取り上げられる時に『二代目』とか『有名パティシエの息子』などと表現されるのを酷く嫌う。


店長の写真が大切に飾られていた事が嬉しくて興奮気味の私は、ついウッカリで嫌がらせを言ってしまう事になりそうだった。


関係性が私にとっては羨ましく思ってしまう事柄だが、晴空君にとっては謙遜でしかない。


店長は親であり永遠のライバルなのだと思われる。


「晴空君、ケーキはブッフェを食べてから最後に取らなきゃ駄目でしょ!」


ブッフェ会場に着いた途端にスイーツ系に目掛けて前進した晴空君は、ある意味、強者である。