このビルは、毎年7月になると1階のホールに、大きな七夕の笹が飾られる。

そして、商業施設を訪れる人たちが、自由に短冊を飾り付け出来るようになっている。

幼稚園に通うたくみの友達が、
「去年、あそこのビルの短冊に書いたら願い事がかなった。」
と、たくみのクラスでは盛り上がったそうだ。

『妹が欲しい』『かけっこで一等賞になれますように』『逆上がりが出来るようになりたい』

「だいちゃんも、まーくんも、ひろくんも、あのビルの短冊に願い事を書いて、みんなその通りになったんだよ!」

「僕もあそこの短冊に願い事を書くんだ。」

義姉を見送ったたくみはそう言って、

「舞ちゃん、一緒に行ってくれるよね。」

可愛らしい瞳でまっすぐに見つめられて、嫌とは言えず、休日だというのに職場のあるビルまでやってきたのだ。

「お願いごと、何て書いたの?」

たくみに聞くと、自信満々の笑顔で短冊を見せてくれた。

『うちゅうひこうしになりたいです』