「岡田?」

7月7日、土曜日の昼過ぎ、オフィスビルの七夕飾りを見上げる私に声をかけたのは、会社のイケメンモテ王子。

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さかのぼること10分前。

「舞ちゃん、書けたよ♪」

そう言って、小さいながらも、なかなか男前予備軍な顔を私に向けるのは、山下たくみ 5才。私の甥っ子である。

そして何が書けたかというと、七夕の笹に吊るす短冊。

今日は大好きなアイドルグループのコンサートがあるからと、義姉に拝み倒され、甥っ子の子守りを任された。

たくみの父親、つまり私の兄の出張が急遽決まったらしく、義姉に泣きつかれたのだ。

コンサート開始は17時からだが、お昼過ぎからグッズの販売があるらしく、ファンの友達とランチもしたいからと、10時過ぎにはたくみを私に預け、義姉はウキウキと出掛けて行った。

そして私とたくみは今、オフィス&商業ビルの1階にあるホールの七夕飾りの前にいる。

このビルは1階から5階にカフェやレストラン、ジム、コンビニ、銀行、クリニックなどの商業施設があり、6階から上はオフィスビルとなっている。

私の勤める会社も、このビルにある。

今日は土曜日で、仕事は休みなのだが、何故ここに来ているかというと、たくみの目的がこのビルの七夕飾りの短冊なのだ。