そして、そっと優しくその手が私の頬に触れてサキはまるで私がここにいるのを確かめるかのようにゆっくりと親指を動かした。
───理性なんて、壊してしまいたい。
そう心の底から思った。だけど壊せない。
徐々に近づいてくるサキの顔。咄嗟にサキの両頬を両手で挟んだ。
今、ここでサキとキスをしてしまえば私もサキも本当にこの気持ちに踏ん切りがつかなくなる。
本音を言えば、理性なんてものは粉々に壊して欲しかった。でもサキには琴音がいるからダメ。
サキもやっと我に返ったようで、焦ったように私から離れた。
「わりぃ…なんか気づいたら」
「大丈夫。何もしてないんだから」
嫌なくらい高鳴るこの鼓動が君の耳には届かないようにただそれだけを今は祈った。
「ほんと……俺……」
「なーに辛気臭い顔してんの?
さっ、帰ろ。一緒に帰ってくれるんでしょ?」
私は本当に何も気にしていないかのように振る舞った。
そうしたらサキもいつもみたいに戻ってくれるかな、なんて思ったから。
これ以上サキを好きになりたくないくせに、距離を置きたいくせに、私は結局サキの近くにいたいと思ってしまっている。
私はどこまでもズルい。



