「まーた、都合のいい言い訳だ」
「うるせえ、うるせえ」
仕返しだ、とでもいうようにサキもホウキで私の足元をツンツンツンとつついてきた。
「10倍返しだ〜〜」
「なっ、やったなぁー!
100倍返しだ〜〜!」
「うわー、逃げろー!」
私がサキをホウキでつつこうとしたらサキは素早く教室の中を逃げ回る。
まるで、あの頃に戻ったように思えてつい頬が緩み、自然に笑顔になる。
ガキくさい、と言われればそれまでだろう。
だけど、私にはそれがものすごく懐かしくて嬉しく思えるような大切な思い出のひとつで、またこうしてサキと笑い合えるなんて思ってもいなかったんだ。
サキが私を遠ざけるために机を動かしてガタガタッと音を立てながら元々あった場所から移動させた。
「あ!せっかく掃除してたのに!」
「あ、それはわりぃな」
「もー、遊びは終わりっ!
早く終わらせよう」
一瞬、サキは誰のものでもない、と錯覚をしてしまった。
サキは琴音の彼氏だということをすっかり忘れてしまっていて、ふと思い出して慌てて気持ちを切り替えた。
「はいよー、あっ、今日はちゃんと送ってくからな」
「え、なんで?」
「帰る方向一緒だし」