「あー、もらってくれてもよかったのに」


「サキからもらったらあとが怖いからね〜」


冗談っぽくそう言うとサキはケラケラと笑った。


「ほんと、お前ってそーいうとこしっかりしてるよな」


そういうところって、どういうところなのさ。

と思いながらも蛍光ペンをサキの前に差し出す。


「ありがと。おかげでいい事あったかも」


なんて、ウソだ。

昨日は何一ついいことがなかった。

だけど、今ここでサキと二人きりになれたことは昨日先生に怒られたせいだからそれだけはいいことだったのかもしれない。

それ以外は本当に最悪だった。


「ウソつきだな。その顔は『なーんにもいいことなかったんだけど、どうしてくれんの』って顔だな」


「はぁ、ほんとサキって変なところ鈍感なのに私のことすぐ気づくよね」


昔からそうだった。
どんなに小さなことでも私の変化にすぐ気づいて声をかけてくれたサキ。


あの時だってそうだ。
サキは本当は私に何があったことに気づいていたと思う。だから普段は言わないようなことも言ってきたりしていたんだ。


あの時、私が素直になって本当のことを打ち明けていたら何か変わっていたのかな?


「あたりまえだ」


「もー、ムカつくなあ」


そう言ってサキの足元を持っていたホウキでツンツンとつつくと「ちょ、おま……っ、やめろよ!」と嫌がっているはずなのに笑いながら嬉しそうに避けた。


「やめろ、とか言ってるのに嬉しそうじゃん」


「はあー?それはなー、お前のために笑ってやってんの」