「……」
「なにか理由があるかもって分かってるんだ。
頭では分かってても心は許せなくて……悪い」
本当に申し訳なさそうに謝る健吾。
そんなに謝らなくても全部私が悪いだけの話なのに。
「大丈夫だよ。本当になんにもなかったから。
みんなに恨まれて怒られるのだって当たり前だから」
「夏葵…」
「それに、こーいうのも慣れてるから」
何も言われないように笑ってみせた。
「やっぱ…」
「さあ、帰ろ。
今までごめんね。バイバイ」
「ちょ…待てよ…夏葵…っ」
呼び止める健吾を教室に残して私は全力で駆け出した。
すばやく上靴からローファーに履き替えて、アスファルトを蹴って、腕を振って、溢れ出す涙を拭うことなく、何度も地を蹴っては足を動かした。
しばらく行ったところで一度足を止めた。
「はぁはぁ…」
ここまできたらさすがに健吾も追いつけないだろう。
膝に手を置いて、地面に視線を向けて肩を揺らす。
こんなに走ったのは、いつぶりだろう。
…もう思い出せないや。
やっぱり、私は逃げてきちゃダメだったんだ。