それでもキミが好きなんだ




私は誰にも“サヨナラ”を言わずに突然姿を消したのだから。


一方でサキはふわっと柔らかく微笑み、口パクで「おかえり」と言った。


たったそれだけなのに涙が出そうになった。


どうしてサキは突然姿を消して、たくさん傷つけた私を怒らないんだろう。


どうして昔と変わらない笑顔で接してくれるのかな。


「えーっと、辰巳は立花(たちばな)の隣だな。お前ら幼馴染らしいからな」


立花というのはサキのことだ。


いらない配慮だ、と思いながらも仕方なくサキの隣の空いた席に腰を下ろす。


「……ただいま」


先ほど、口パクで「おかえり」と言ってくれたので一応返しておこうと思い、小さな声でそう呟いた。


まさか私がこんなことを言うなんて思っていなかったのか一瞬目を丸くして驚いていたけど、すぐに笑顔になって私に微笑みかけた。


「やっぱり、ナツがいると落ち着くわ」


この男は本当に天然タラシだ……。


そんなこと言われたら、嘘でも舞い上がってしまいそうだ。


そのまま何も言えずにホームルームが終わってしまった。