「ありがとな、健吾。
ナツのこと、連れて帰ってくる」

「ほんと世話焼けるやつだよな。
まあ、いい報告待ってるわ」


俺の方をみて優しく目を細める健吾に手を振ると、俺はダッダッダ、と階段を駆け下りて、チラホラいる生徒をかき分けて、ローファーに履き替えて、自転車に乗り、全力でペダルを漕ぐ。

今日は自転車で来ていてよかった。

もっと早く、もっと早く漕いできみのところに行きたい。

夏の生ぬるい風が俺の頬を撫でる。
ここは田舎だから、電車で少し都会の街まで出るはずだ。

だったら、行き先は駅しかない。
でもどこから乗るんだ?最寄り駅かもしれないし、ほかの駅かもしれない。


「咲都ーー!!!△○駅だよー!!!」


名前を呼ばれた方を向くと、少し遠くから手を振って叫んでいる琴音がいた。

きっと、琴音はナツの乗る駅を知っているから教えに来てくれたんだ。