すると、親父は『そんなわけないだろ。わたしの大事な息子だよ』と言うとメガネ越しに潤んだ瞳で俺を見つめ、そっと優しく抱きしめた。


そのとき初めて父親の愛情を感じた。『サキ、よかったね』って天使のように柔らかく笑ってくれたナツ。今でもはっきり覚えている。


ナツがいてくれたらなんだってできる気がしていたんだ。いや、今だってそうだ。

ナツという存在がいるだけで俺はなんだってできる。いつだって、ナツは俺を救ってくれて、笑顔をくれた。


「ナツにとって、俺はどんな存在だったのかな」


俺にとっては大切で何にも変えられない存在だった。

だけど、ナツはどうだったんだろう。


一人で苦しいんで悩んでいたナツに俺は手を伸ばしてあげることができなかった。


「夏葵にとっても咲都は大切な存在だったよ。
ずっと二人をみてきた俺が言うんだから。
二人はお互いを必要としてたよ」