「サキはどうしたいの?」
「そりゃあ……ずっとそばにいてほしい」
「だったら……!」
「それじゃあ、ダメなんだよ。
それを、ナツは望んでない」
「……」
ナツは俺といる未来を望んでいないんだよ。
それなのに、無理やり引き止めて何になるんだ。
返す言葉が見つからないのか、健吾が黙り込む。
少しの間、沈黙が続いたけどそれを破ったのは俺だった。
「……俺、みんなからいつも笑ってるって言われるじゃん」
いきなり、話し始めた俺に健吾は少し驚きながらも静かに頷いた。
「俺……弱いからさ、ずっと笑ってないとみんなが離れちまうって思ってたら勝手に面白くなくても笑うようになってて空気読むことが普通になってたんだ」
幼い頃の体験がトラウマになっているんだと思う。
自分がいい子にしていなかったから母さんはいなくなった。