時間はいたずらに過ぎてしまう。
家の前まで着いてしまったので、名残惜しさを感じながらも荷台から降りる。


カゴンと音を立てながらサキが自転車を停める。


「ねえ、サキ」

「ん?」

「今までありがと。
元気でね!バイバイ!」

「……は?」


私は背伸びをして、彼の頬にちゅ、と口付けをした。

そして、何も言わずにそのまま家に駆け込んだ。
サキが「待てって……!」と言っているけど、私は振り向かなかった。

だって、恥ずかしすぎるし……それに、こんなに泣いちゃってるなんてバレたくない。

泣いているところなんてたくさん見られているけど、最後は笑顔でさよならしたかったんだよ。

君にとって私の最後の記憶が泣き顔じゃなくて、笑顔になるように、そう思ったから。