失うことの怖さを知っているからこそ、永遠なんてないことを知っているからこそ、大好きな人との時間は大切に感じる。


「冷てえな」

「ほら、涙拭いてあげるじゃん」


そういって、親指でそっとサキの頬を流れる涙を拭う。すると、サキは少し照れたように顔を赤くして笑った。


「やめろよ、恥ずかしいな」

「はあ?私の優しさを踏みにじったなあ」

「それは悪かったって」

「絶対思ってないでしょ」

「思ってるって」

「ほんとかな」


あと少しで、終わってしまう。
サキと過ごす時間も、私の恋も。
未完成な恋はいつまでも彷徨い続ける。


「そろそろ、帰るか」


そっと名残惜しげに言ったサキの言葉に静かに頷いた。