「ごめんってばあ」
「アイス奢ってくれたら許す」
「うわ、それ私がよくサキに言ってたことじゃん」
「懐かしいなー、なんかあったらすぐそれだったもんな」
「ほんとだね」
好きで、好きで、仕方なくて、きみといれるこの時間がたまらなく愛おしく感じて、何度もきみの背中を見つめて、振り返った優しい笑顔に癒されて、すべてが輝いていたあの頃。
いまも、まるであの頃に戻ったように輝いている。だけどそれもあとすこしで輝きを失う。
キラキラ光る宝石が輝きを失って、ただの石ころになってしまうんだ。
「そう口では言っててもナツは俺に奢らせたことなかったよなあ」
「だって、そんなの悪いじゃん」
「そういうのは男に払ってもらえばいいんだよ。
女はもらえるもんは全部もらっとけって」
「なにそれ、急にサキが別人に見えた」
あの頃のように戻ったようだと言ったけど、あれは少し違っていたかもしれない。
私たちはお互い成長して、三年の間に以前は持っていなかった考えや気持ちを持っていて、大人に近づいているのだと実感させられた。



