「そうだね」
サキの自転車のカゴにはラムネが二本入っている。
たぶん、私を迎えに来る前に買いに行ったんだと思う。
本当にどこまでも優しい人だ。
そんな優しさに胸がぎゅっと締め付けられる。
「あー、夏休みの宿題終わってねえ」
「早くやりなさいよ。
もうすぐ新学期だよ?バカ」
「ほんとは七月中に終わってるはずだったんだけどなー」
「ほぼ一ヶ月も遅れてますけど?」
私はサキと一緒に新学期を迎えることができない。
また、あの環境に戻ってロボットみたいな生活を送るんだ。
楽しかった日々は帰ってこない。
「おっかしいなー。まだ8月上旬じゃね?」
「あんたの頭がおかしいんだよ。それ」
「うわあ、ひでえ」
そう言いながらクスクスと笑うサキにつられて私まで同じように笑ってしまった。