「……ありがと。私、生きててよかった」
そう、小さく言ったナツの声はちゃんと俺の耳に届き、何も言わずにただそっと頭を撫でた。
それからしばらくして、ナツが泣き止み、俺は家まで送っていくことにした。
「別に送っていかなくていいって言ったのに」
「可愛くねえ言い方」
「悪かったわね!」
もういつも通りのナツに戻っていて、胸をホッとなでおろす。
「まあ、たまに可愛いところもあるけどな」
「はあ?」
「あー、そういえば昴くんって良い奴だよな」
「でしょ?」
本当に見ず知らずの俺たちのためにここまでしてくれる優しいやつだ。
それから他愛もない会話をしながら家まで送った。
「じゃあ、またな」
「……うん、またね」
“さよなら”じゃない、“またね”。
これからも愛おしい君に会える。
そう思うだけで心が弾み、鼓動が甘い音を奏でた。