そういうと、ナツはゆっくりとこちらを向いた。
視線は下がったままだけど、それでもいいや。

いま、精神が乱れているナツに好きだなんて伝えたってダメだと思う。
だから、かわりに今俺が思っていることを伝える。


「……生きててくれてありがとう」


ずっと、苦しかったよな。
それなのに生きててくれてありがとう。

そのおかげで俺はまたお前と会うことができた。
ナツは暗闇を照らす光。

すると、ナツは弾けるように頭を上げて俺のことをジッと見つめる。その瞳には徐々に涙が溜まっていき、やがてツーっと頬を伝う。


「他にも言いたいことはあるけど、それはまた今度な。いまはこれ言うのが精一杯だわ」

「……バカっ」

「お前なあ……」


恥ずかしさからおちゃらけようとしたとき、ナツがぎゅっと俺の服にしがみついてきた。


「……ナツ?」

「バカバカ…っ
サキのバーカ…っ!!」

「おいおい……」


俺の胸をトントンと叩くナツ。
だけど、それは次第に弱まっていき少ししてからナツは動きを止めた。