「……ごめんな、守ってやれなくて」

「私を守るのはサキの役目じゃないよ。
っていうか、早く離れてよ」


ナツが泣いているのは分かっている。
その証拠に俺の肩が涙で濡れているから。

ゆっくりと体を離すと、ナツは無言で体を回転させると俺を置いて歩き始めてしまう。


「待てよ」


慌ててがしっ、と掴んだ手首。

細くて今にも折れてしまいそうなくらいだ。
こんな小さくて華奢な体でいろんなもん背負って、苦しめられて、どれだけ生きることが嫌だっただろう。


「なんで引き止めるの……?」

「ナツ、これだけ聞いてほしい。
だからこっち向いて。俺の目を見て」