ナツにとって、心を安らげる場所はここにしかなかったんだ。
なのに、俺は、俺たちは……
ナツを余計に苦しめたんじゃないのか?
「親父に言われたよ。
『夏葵を連れ戻してこい』って」
「……連れていかないでくれ、頼む」
何があっても、ナツは帰さない。
もう二度とナツを一人で泣かせたくない。
いや、今まで散々泣かせておいて、と思われるかもしれないけど……だからこそこれからはもう寂しい思いをして泣かせたくないんだ。
「俺もそうしたいんだけど親父が頑固だから」
「……俺からナツを奪わないで」
ナツは俺のものじゃない。
俺もナツのものじゃない。
だけど、もう二度とナツと会えなくなるなんてそんなのごめんだ。
ナツに会えない日々は本当に辛い日々でいつまで経っても忘れられなかった。琴音だって気づいていたはずだ。俺がまだナツを好きでいたことくらい。
それに今だってこんなにも会いたい気持ちで溢れている。



